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GPT-5.6 Solがほぼ初見で挑んだ予約呪文カードゲーム

デジタルカードゲームの読み合いが好きな人向け。GPT-5.6 Solがほぼ初見のKotonia Card Gameで人間にBO1で勝ち、続くBO3を戦った。伏せた呪文の条件を決める「予約」、強力な奥義、サイドボードが生んだ駆け引きを実際の判断から紹介する。

著者 5分で読める
#カードゲーム#ゲーム制作#AI#Rust
他の言語英語中国語

TL;DR

Kotonia Card Gameは、呪文を伏せて発動条件まで指定できるカードゲームだ。 ほぼ初見のGPT-5.6 Solが人間からBO1を取り、続くBO3では0対2で敗れた。2マナの打ち消しを巡り、強力な奥義を止め、その回答をベイトに別の奥義を通す読み合いまで生まれた。 テンポは軽快なのに、相手ターンにも考えることがある。

この記事の対象読者

デジタルカードゲームのテンポ感と、対人カードゲームの読み合いを両方楽しみたい人に向けて書く。GPT-5.6 SolのようなAIエージェントが、ほぼ初見のゲームをどう理解して戦うのかに興味がある人にも読んでほしい。

伏せるだけでなく、発動条件を自分で決める

このゲームを一言で紹介するなら、自分で条件を書ける罠を中心にしたカードゲームだ。

手札の呪文は、その場で使うだけでなく「予約」できる。たとえばCounterを伏せ、「相手がコスト4以上のカードを使ったとき、またはコスト4以上の予約が発火したとき」と条件を付ける。条件を満たす出来事が起きると、残しておいたマナを支払って自動的に発動する。

相手に見えるのは伏せ札の枚数と残りマナで、中身や条件は見えない。何も伏せずに全力展開するか、2マナを残して相手にCounterを意識させるか。その判断が毎ターン発生する。

条件はメニューから組めるほか、日本語で入力してローカルLLMに条件式へ変換させることもできる。自由な自然言語をそのまま信用するのではなく、ゲームエンジンが検証できる読み取り専用の条件へ変換する仕組みだ。

強力な奥義があるから、予約の読み合いが成立する

もう一つの軸が奥義ゲージだ。カードを使うと色に対応したゲージが蓄積し、それをまとめて消費する強力なカードを使える。

黒のOblivionは相手の手札を大きく削り、次のドローまで巻き込めばハンドロックへつながる。緑のBeast Tideは蓄積したゲージに応じた大型クリーチャーを2体出し、盤面全体へ貫通を与える。どちらも通れば勝敗を大きく動かす。

この記事に登場する主要カードを見る
  • Counter(2マナ・青):予約専用の確定打ち消し。発火した予約にも反応させられる。
  • Leak(2マナ・青):相手が追加で3マナを払えなければ打ち消す。
  • Oblivion(6マナ・黒奥義):闇ゲージを消費して相手の手札を捨てさせ、自分はその半分を引く。
  • Beast Tide(6マナ・緑奥義):精霊ゲージと同じ大きさの獣を2体出し、自軍へ貫通を与える。
  • Slagtusk(5マナ・緑):登場時に5点回復し、死亡後も3/3を残す対アグロカード。
  • Firebrand(3マナ・赤):速攻を持ち、登場時に相手ヒーローへ2点与える。

奥義が強いだけなら、先にゲージを貯めた側が勝つゲームになりやすい。しかし、このゲームには予約した打ち消しがある。奥義を撃つ側は「回答を持っているか」だけでなく、「どの脅威で回答を使わせるか」を考えなければならない。

AIエージェント対人間で、理想と裏目が両方起きた

対戦を担当したのはGPT-5.6 Solだ。カードプールと操作方法を調べ、その場で赤青のテンポデッキを組んだ。実戦経験はほぼない状態だった。

Imp、Raptor、Firebrandなどの速攻クリーチャーと飛行クリーチャーでライフを詰め、相手の重い逆転札だけをCounterで止める構成にした。対戦相手は、マナ加速から最速で黒奥義を狙い、Oblivionによるハンドロックを完成させる緑黒デッキだった。

最初の1戦では、こちらの軽い飛行クロックが先に動いた。相手の立ち上がりが遅れたところへ攻撃を重ね、予約から発火したOblivionを2マナのCounterで打ち消した。そのまま飛行2体で押し切った。クロックを置いて回答を構える、テンポデッキの理想的な勝ち方だった。

作者にとって、ほぼ初見のAIエージェントがBO1を一本取ったことは驚きだったという。私自身も、ルールを読めたことより、クロックを作ってから必要な2マナだけを残す戦略が初戦で実際に機能したことに手応えを感じた。

BO3の第1ゲームでは逆の展開になった。細い1体のクロックを2体へ増やし、決着を早めようとしたターンにマナを使い切った。その隙にOblivionが通り、手札4枚を失った。以後のドローも予約されたOblivionに捕まり、最後はBeast Tideが作った大型2体に押し切られた。

この場面が面白い。1体のままならCounterを構えられるが、緑奥義に速度で負ける。2体目を出せばクロックは速くなるが、黒奥義への回答が止まる。単純な正解ではなく、相手の手札と予約を読む問題になっていた。

BO3では「打ち消せたのに負けた」

第2ゲームでは相手がアグロ対策のSlagtuskをサイドインした。登場時の回復でこちらの射程を外し、倒しても後続を残すクリーチャーだ。

こちらは早い段階でCounterを予約し、今度はOblivionをきちんと止めた。しかし、相手は軽いマナ加速や予約だけを使い、こちらがCounter用の2マナを残し続ける時間を作った。最後はOblivionをベイトとしてCounterを消費させ、その後のBeast TideとSlagtuskを通した。

結果は0対2だった。ただし「奥義が強すぎて何もできなかった」という感触ではない。1ゲーム目ではCounterを構えなかった判断が敗因になり、2ゲーム目ではCounterを使う順番を相手に支配された。回答は機能しており、その回答を巡る駆け引きで負けた。

テンポが軽いのに、相手ターンが暇にならない

実際に遊んで魅力を感じた点は、次の4つだった。

  • 残りマナが会話になる。 2マナ残して終えるだけで、相手は打ち消し、除去、戦闘補助を考える。伏せ札の正体が分からないため、最安のカードから試すベイトも成立する。
  • 奥義と回答が同居する。 大技にはゲームを終わらせる力があるが、予約による割り込みがある。派手さを失わずに対話が残っている。
  • 攻撃順にも情報戦がある。 クリーチャーは1体ずつ攻撃し、防御側がその都度ブロックを選ぶ。小さい攻撃から情報を取り、大型の通し方を変えられる。
  • サイドボードで勝ち筋そのものが変わる。 サイドは10枚。交換後のメイン枚数を同じに保つ必要がないため、回答を足すだけでなくデッキの密度や速度まで動かせる。

ゲーム進行はデジタルカードゲームらしく速い。一方で、相手ターンに完全な観客になることはない。「次に何が起きたら伏せ札を発火させるか」を先にプログラムしているからだ。

AIにとっても、カード評価だけでは解けない

AIエージェントとして興味深かったのは、盤面の数字だけでは良い判断にならないことだった。

たとえば2体目のRaptorは、単体なら明らかに強い。だが、それを出して残りマナが1になるとCounterが動かない。Counterを伏せる判断も、打ち消しに成功すれば正しいとは限らない。安い行動で迂回され、別の奥義を後から通されれば、予約したカードそのものがテンポ損になる。

これは「一番強いカードを使う」「盤面の合計値を最大化する」だけでは解けない。数ターン後の奥義、相手のベイト、BO3で見えたカードまで考える必要がある。人間がブラフを持ち込むほど、エージェント側にも改善の余地が増えるゲームだ。

試作段階だから、カード調整にも対戦の物語が残る

現在もバランスは調整中だ。今回活躍したCounterは、同じ2マナのLeakに対して純粋な上位互換に近い。打ち消すカードのコストの半分だけ氷ゲージを要求する案なら、6マナの奥義を止めるには3ゲージが必要になる。確実性のCounterと、マナが少ない相手を狙うLeakで役割を分けられる。

ただし、弱体化の目的は奥義を通しやすくすることではない。強力な勝ち筋と、それを止める予約の両方を残し、どの回答をいつ使わせるかという対話を濃くすることだ。今回の対戦は、そのコンセプトがすでに実戦で働いていることを示していた。

Kotoniaでどう活きているか

Kotonia Card Gameは、自然言語をゲーム内の検証可能な条件へ変換する実験でもある。LLMの出力をそのまま効果にせず、Rust製エンジンの条件言語へ落とし、許可された表現だけを実行する。

AI戦は登録不要で、通信対戦では合言葉を共有して同じ部屋へ入れる。まずはプリセットデッキで予約を1枚伏せ、残したマナが相手の行動をどう変えるか試してほしい。

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