分析でわかった「機能はあるのに使われてない」状態を、UI 分割で解いた話。

ワンショットで吐いた LoRA × cyberpunk neon の一枚。記事を書いてる間に生成。
行動ログを見たら異常事態だった
自前で書いた analytics で新規ユーザーの行動を追ったら、以下のパターンが浮かんでた:
- 新規登録の流入経路で最多は動画生成 (
/video-studio)。SEO / SNS 経由で「AI 動画」を見にくる人が一番多い - 初日に大半が離脱。平均アクション数は 5 前後で、その後二度と戻らない
- 離脱前に触ってる機能はほぼ動画生成のみ。エージェントや画像スタジオには到達してない
仮説はシンプル: 動画生成をデフォルト値で数回試して、思ったほど良い結果が出ずに諦めて帰ってる。
実際 LTX-2 のような I2V モデルはプロンプトと参照画像の質に強く依存するし、デフォルトの 5 秒・低解像度・適当な prompt では弱い。慣れてる人なら shift・negative・カメラワーク・解像度を全部チューニングするけど、初訪問のユーザーがそこまでやるわけない。
エージェントには答えが既にあった
実は同じプラットフォームの ReAct エージェント (AI が tool 呼び出しと推論を交互にやって自走するパターン) には、良い動画を出すためのノウハウが既に組み込まれてた:
- プロンプト練り直し (雑な入力 → 強い prompt)
- LoRA 込みのキービジュアル生成
- I2V に渡す前の参照画像最適化
- 生成後の自己レビュー → 必要なら 1 度だけ再生成
この一連の流れは HiDream-O1-Image の LoRA を自作した理由 や 1 行アイデアを 40 秒コメディ動画にする 10-beat パイプライン で個別に書いてきた手法を、エージェントが自走できる形に組み立てたもの。
なのに、新規ユーザーはこの機能の存在を知らないまま帰っていた。
エージェントが自走でセルフ修正した実例
最初に吐いたクリップ (clip-1) は腕の一部に変なフレームが混じってた。それをセルフレビューで検出して、prompt を「動きは控えめに」と書き換えてもう一度回したのが clip-2。「自分でレビューして、ダメなら直す」のループがそのまま見える例。
▶ clip-1 (初回出力) を再生 ・ clip-2 (再生成版) を再生
なぜ存在を知られなかったか
/chat/ai-chat という 1 つのページに、Python 実行・マルチモデル・ReAct エージェント・wiki RAG・添付ファイル ... 全部詰め込んでた。設定パネルの奥にある「ReAct モード」トグルをオンにすると、初めて画像/動画ツールが使える、という構造。
問題:
- そもそも ReAct という言葉がわからない。論文読まないと何ができるか伝わらない
- デフォルトが通常チャットなので、ほとんどの初訪問ユーザーは ReAct 機能の存在に気付かない
- 「Python のチャット」「画像/動画を作るチャット」「マルチ AI の比較」を 1 ページに同居させてしまい、何のためのページか読み取れない
機能がないわけじゃなく、玄関が間違ってた。
サーフェスを 2 つに分けた
/chat/ai-chat を独立した 2 ページに分割した。
| 旧 | 新 | 何をするためのページか |
|---|---|---|
/chat/ai-chat (normal モード) | /chat/code コードチャット | Google Colab 風。AI が Python コードを生成 → セルで即実行 → 出力ファイルは自動配信 |
/chat/ai-chat (ReAct モード) | /chat/studio クリエイティブスタジオ | アイディアを 1 行投げると、AI が prompt 練り直し → 画像生成 → 動画化 → セルフレビュー → 必要なら再生成、まで自走 |
旧 URL は新 URL へ自動リダイレクト。ブックマーク・SNS シェアは生きる。
サイドバーも分けた。「チャット」グループに「コードチャット」、「スタジオ」グループに「クリエイティブスタジオ」を入れた。後者は既存の /studio (手動画像)・/video-studio (手動動画) の隣に並ぶ。「素材を自分の手で作る場所」と「AI に任せて作ってもらう場所」が空間的に分かりやすくなった。
それぞれのページは空の状態で 3 つのオンボーディング例文をクリッカブルで並べてある。クリエイティブスタジオなら「アニメキャラ + 5 秒動画」「キャラ一貫の画像 3 枚」「5 カットストーリーボード」。何ができるかを文章で説明するより、1 ターン目で wow を起こす方が速い。
手動と自走の比較を脳内でさせる仕掛け
ここが今回の核。
/studio (手動画像) と /video-studio (手動動画) で生成が完了して動画を最後まで再生し終わると、ポップアップが出る:
この動画、もし AI エージェントに任せたらどうなる?
クリックすると新タブで /chat/studio が開き、入力欄にさっきと同じプロンプトが prefill された状態になる。元の手動作業タブは残るので、両方の結果を並べて比較できる。
これは UX として効く。手動の 1 ショット結果と、エージェントが自走して出した結果を脳内で比較すると、エージェントを選ぶ理由が体感でわかる。説明されるより一度比較した方が早い。
まとめ: 機能じゃなくて UX を疑った方がいい時がある
機能の追加では解決しなかった「離脱問題」が、UX 分割で解決の目処が立った。
個人開発で「機能はあるのに使われてない」状況に陥ったとき、最初に疑うべきは「機能が足りないこと」じゃなくて「機能を 1 箇所に詰め込みすぎてること」かもしれない。サーフェス境界を引き直すと、組み合わせや発見が連鎖的に動き出すことがある。
実際に試せます: kotonia.ai/chat/studio

